将来構想

「野生生物と社会」学会第2期将来構想にかかるアンケートの結果について

1. 調査の概要

  • 本学会の将来構想を検討するため、学会員の現状とニーズを把握するアンケートを実施した。
  • 調査は、Web調査及びハードコピーによる調査を行い、前者は2015年11月~12月の1ヶ月間、後者は沖縄大会の参加者に対し実施した。
  • Web調査で179名、沖縄大会で23名の回答を得た(全会員の39%)。

2. 結果


(1)回答者の属性

  • 73%が正会員、22%が青年会員と、実際の会員区分の分布と同程度であった(2015年9月末現在の会員区分分布:正会員70%、青年会員27%)。
  • 年齢構成は、20代18%、30代26%、40代29%、50代17%であった。
  • 男性が73%、女性が27%であった。
  • 学会所属年数は、6~10年が23%で最も多く、ついで1年未満(21%)、16年以上(16%)となった。


⇒ 回答者の会員区分と実際の会員区分の分布比較した結果、母集団に近いサンプリングができたと考えられた。



  

(2)学会に対する態度

  
●学会に果たしてきた役割について
  • 学会入会の経緯は、「知人に勧められて」(34%)、「HP/MLによる情報収集」(25%)、「大会に参加して」(24%)の順に多かった。
  • 学会入会時の学会に対する期待は、「情報収集」、「研究者との意見交換」、「関係者とのコネクション作り」、「研究発表」の順に高かったが、「企業関係者との意見交換」は相対的に低かった。
  • 入会時の期待に対し、学会が果たしてきた役割に対する満足度は、いずれも「どちらかといえば満足」が最も多く、特に「情報収集の場」としての評価は高かった。
  

⇒これまでの学会活動は、学会員の期待に概ね応えられてきたが、さらに満足度を上げる余地(特に研究発表の場の充実)は残されていると考えられた。

学会入会の経緯


●学会費の設定について
  • 「ちょうどよい」が48%、「少し高い」が33%、「安い」と「少し安い」をあわせると29%であった。

⇒ 学会費の設定は、会員に受け入れられていると考えられた。


●学会に対する総合評価
  • 「どちらかといえば満足」が54%、「どちらともいえない」が20%、「満足」が16%であったが、「少し不満」「不満」をあわせると9%であった。
  • 学会の継続意図は、「そう思う」が64%で最も多かった。

⇒ 学会に対する総合的な評価は良好で、会員継続意図も高いと考えられた。



  

(3)大会に対する態度

  
●大会への参加状況
  
  • 78%が大会に参加した経験を持っており、学会名称変更後の大会には、53%が参加していた。
  • 大会参加経験者のうち、ほとんどが大会に複数回参加しており、6回以上が26%に対し、1~2回は42%であった。

⇒ 大会参加経験者が多く、かつ学会名称変更前と後の大会に参加した経験を持つ回答者も一定の割合でいたことが分かった。


  
●過去2大会(犬山、篠山)の評価と今後の大会参加意図
  
  • 満足度は、「満足」が35%、「どちらかといえば満足」が51%であった。
  • 今後の大会参加意図は、「条件が合えば参加したい」が66%で最も多く、「ぜひ参加したい」が25%であった。
  • 大会での発表意図は、「条件が合えば発表したい」が62%、「ぜひ発表したい」が19%であった。

    • ⇒ 大会に対する評価は良好で、今後も参加者や発表者を維持できると考えられた。



        

      (4)学会誌に対する態度

        
          
      • 閲覧状況は、「少し読んでいる」が55%、「注意深く読んでいる」が26%であった。
      •   
      • 70%は投稿経験がなかったが、「ぜひ投稿したい」が20%、「条件が合えば投稿したい」が57%であった。
      •   
      • 発行回数は、「適当」が81%、「少ない」が18%であった。
      •   

        

      ⇒ 学会誌に対する関心は高い一方、投稿経験のある回答者は少数であったが、投稿意欲は持っていたので、さらに投稿意欲を高め、実際に投稿してもらう仕掛けが必要と考えられた。

        
        

      (5) フォーラム誌に対する態度

        
          
      • 閲覧状況は、「少し読んでいる」が44%、「注意深く読んでいる」が38%であった。
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      • 71%は投稿経験がなかったが、「ぜひ投稿したい」が10%、「条件が合えば投稿したい」が55%であった。
      •   
      • 発行回数は、「適当」が90%、「少ない」が9%であった。
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      ⇒ フォーラム誌に対する関心は、学会誌より高い一方、投稿意欲は学会誌より低かったので、編集部による執筆依頼が今後も必要と考えられた。

        

      (6) 今後の学会活動について

        
          
      • 鳥獣管理に関する政策、技術、人材育成など全般的なテーマに対するニーズが高いことが分かった。
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      • 外来生物問題や生物多様性に対するニーズが高かった。
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      • 行政や民間企業との連携や協働に対するニーズが高かった。
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      • 一方で、国際交流や国際的なテーマ、アマチュアとの連携や協働については、ニーズはあるものの優先順位は低かった。
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      ⇒ 鳥獣管理に関するテーマを主軸に、それ以外の野生生物に関する社会科学的側面を捉えた学会活動が、現在の学会員のニーズであると考えられた。

        
         

      (7) 自由回答

         
         
      • 将来構想などに注力するのは悪いことではないけれど、もっと自然に任せていいのではないか。こういうことに割くエネルギーがあれば、もっと研究に力を入れたほうがいいと思う。
      •  
      • 海洋関係の発表をもっと増やしてほしい(増えたらうれしい)。シカばかりの発表で驚いた。
      •  
      • 私は植物関係なので回答は一般的でないと思います
      •  
      • 学会発表の撮影を完全に禁止すべき。今の時代に合っていない。発表内容によっては困ることもある。改善がなければ今後発表をしたいと思わない。
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      • 次の将来構想に期待しています
      •  
      • 若手に活気のある稀有な学会だと思う。それは獣害からの田舎自体の保全が若者に受けているからだと思う。一過性のものかもしれないが、それはうまく利用しながら、小さな学会が乱立する時代において是非、特色ある学会として地位を築いて欲しい。期待しています。
      •  
      • 鳥獣行政や他の野生生物の保護管理に関するシンクタンクとして機能すること。欧米の環境NGOの役割を果たすこと。
      •  
      • 今後も研究者と行政官、企業、NPOなど、多様な関係者が集いたくなる魅力的な場をつくっていってほしい。
      •  
      • 多様な人材や職種間にて活発な議論が行われるような場にしてほしい。
          運営には、ベテラン研究者だけではなく、運営に思慮できる人材、フットワークが軽い、人脈が広い、様々な業種、男女比率など、幅広いメンバーで行っていただけるよう期待している。青年部幹事や、青年部会の中にも埋もれている人材があるはず。本人の努力や能力が最前提ですが、有力な人材を拾い上げて、多くの人が活躍できるような学会にしてほしい。
      •  
      • 実践で必要とされる部分でテーマを広げて、メジャーな学会になってほしい
      •  
      • 門戸を広く開放すべき
      •  
      • 日本だけでなく、国際的な学会として位置づけられるような努力が必要だと思います。
      •  
      • 学会名称が変わったけれども、結局、この学会で議論されている「社会」の内容は以前とたいして変わっていないような気がしてしまう。本気で「野生生物と社会」という名前にふさわしい学会を目指すのであれば、社会科学を専門としない学会員や社会科学の中でも政策系の議論しかしてこなかったような人のあいだで「社会」の議論を完結させるのではなくて、隣接する他の学会(環境三学会や林業経済学会、村落研究学会、民俗学会など)で活躍する研究者を呼んでガチンコの議論を吹っ掛けるぐらいのことをするべきではないのか。そうでないと、結局、人文社会系の若手は他に流れていってしまう気がする。
      •  
      • 将来像についてです。鳥獣被害やその管理における社会的ニーズがもっと高まり、この分野を専攻している学生や若手が目指せるような職域の開拓を学会が意欲的に行っていってもらえたらと思います。
      •  
      • 鳥獣被害に特化しないでほしい.人と自然との扱いについて広い視点ですすめてほしい.
      •  
      • 若い方々が、楽しく参加し、学び、情報交換ができるような開けた学会であることを強く望みます。若手の学会への引き込みのためにも、学会の主旨を明確にして、アピールできればと思います。個人的には、前身の野生生物保護学会の名称の方が分かりやすかったかと感じております。現行の学会名は、他人に説明するも理解を得にくい部分があります。社会科学系の学会と勘違いされやすい気がします。
          今後ともどうぞヨロシクお願い申し上げます。
      •  
      • 学会全体として「鳥獣」に偏っている課題は長年のテーマでありながら、一向に改善されていない。ワーキンググループを設置するなどして、本腰を入れて議論すべきだと思う。また、役員や将来構想委員会などの会本体に関わる組織についても、鳥獣以外の委員枠を設定するなどの取り組みがなければ課題解決には至らないのではないだろうか。必要に応じて、学会の会員外の人間にも外部委員として助言や意見もらうなどしても良いと思う(役員の多くが鳥獣に偏っている現状では、いくら議論しても上記の問題は解決のしようがないと思うので)。
      •  
      • 「野生動物と社会」を冠していますし、内容的に国内ではなかなか無い学会なので、これからも野生動物管理(地域づくりや教育も含めて総合的に)に特化した学会であってほしいと思います。
      •  
      • 日本は社会科学が生物多様性保全になかなか関われていないのが現状だと思います。野生生物管理に関する政策決定過程に関わるのも有識者が多く、一般市民はなかなか巻き込まれていきません。その原因や対策の追及は、日本の生物多様性保全において急務だと思っています。「野生生物と社会」学会の理念や運営方針には、強く共感しており、今後も期待しています。より社会学系の研究者が携われるような仕組み作りを、今後もよろしくお願いいたします。
      •  
      • 地域再生であれ、アマチュアとの交流であれ、既存の学会がすでに行っていることなので、この学会でしかできない独自性を打ち出してほしい。
      •  
      • まだ学会名称を変えてから日が浅いので,もう少し長期の視点でビジョンを設定した方が良いように思います。
      •  
      • 10年から20年先を見据えた国内外の動向をいち早く踏まえて動くこと。
      •  
      • いろいろと取り組もうとする姿勢は評価しています。ただ、多くに手を出す分、いくつかの活動は中途半端になってしまっている気もします。まずは本来の学会の柱である学会誌を充実していくことが大事かと思います。
      •  
      • 知名度が上がるとよいと思います
      •  
      • 若い研究者が多いことが特色であり、ぜひこの性格は続けて欲しい。さらに地方自治体を含む実務者がもっと会員となることが必要。そういう意味では行政研究部会の登録者から会員への移行ができるかどうかが鍵だと思う。
      •  
      • 自然科学と社会科学の双方を合わせた分野を展開して欲しい
      •  
      • 研究者だけでなく、NPOやフリーなど、広く参加しやすい学会にしてほしい。行政部会はあるが、NPOなどの部会なども作ってほしい。
      •  
      • 哺乳類学会・生態学会・人と動物の関係学会との違いを明確にすべき。別のテーマを特化していけば方向性がわかりやすくなるのでは。しかし、総合的・横断的なおもしろい投稿がない。
      •  
      • 今後もこの学会の役割は重要なので、ぜひ存在をアピールし続けて欲しい。
      •  
      • 学会で報告された研究結果等について、行政機関や議員等への情報提供や施策提案等を行うことで、本来望ましい野生鳥獣対策の施策に反映される切っ掛けとなることを期待しています。
      •  
      • 本会と行政研究部会とのつながりの強化
      •  
      • グローバル化(海外からの留学生や観光客の増加など)が進む中、この学会は地域志向が少し強すぎると思う。学会として国際社会の中でどのように存在意義を見せられるかが、今後は重要だと思う。学会名が変わり、より社会を意識するようになったが、生態学をベースとする理系の研究者・会員が離れてしまうのではと危惧している。
      •  
      • 若手が活躍できる良い学会であるが、論文の投稿数が少ないため、まだ学会の基盤が整っていない。まずは、ジャーナルの活性化が求められる。
      •  
      • 青年部会に所属しているが、こういった将来像の検討に係るスケジュールを明示して頂きたい。
      •  
      • ハードコピーの刊行物だけでなく、電子発行やネット掲示板等で情報交換できるように。
      •  
      • そこまで考えて学会に入っていません。申し訳ありません。
      •  
      • 知名度が上がり、行政機関や社会にインパクトを与えられるような学会になることを望む。
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      • 会の運営など、ご尽力に感謝します。
      •  
      • 行政ニーズに応える,政策の提言や評価を行う,市民への普及啓発を担うといった,学術団体に必要不可欠でありつつも純粋学問ではない分野で力を発揮する学会であってほしいと思います.
      •  
      • 僭越ながら、外部から見ていて、マクロ生物系の研究室が減少している状況で、ここまでよい歩みをされてきていると感じている。大学研究者だけではないソサエティとして機能している学会は少なく、関連分野の多様な業種で構成されていくことは、当該学会において重要と考える。
      •  
      • 類似した学会、あるいは分野的にかぶる学会が多くある中で、本学会の個性をどう示してゆくかが鍵であろう。まず多様なアクターが参加できるプラットフォーム的な学会になるにはかなり柔軟性のあるアイデアが要求されるだろう。これは学会員の考え方であるが、当学会は応用学的な保護管理分野や世界遺産を目指す生物多様性や種の保全、外来種といった人間社会との軋轢と希少種保全に集中している。このため、応用分野で求められる基礎研究的な生物学プロパーをどの学会が担うのかが見えない。当学会は応用性ある方向を模索してきているその方向性は良いが、応用研究は結局、基礎研究がしっかりあることが前提となるはずで、このことを他学会と議論すべきではないか?要は棲み分けである。どうも多くの学会が明確なビジョンを見失っているように見える。そのあたりから整理するべきではないか?
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      • 学会を運営する役員の熱が伝わってくるような学会であってほしい。
      •  
      • 行政・現場とも、もっと活発に参加・発言・投稿などできる場として続けてほしい。
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      • 会員増と研究成果蓄積を進め、さらなる発展と社会や政策への影響度拡大を期待します。
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      • 抽象的な意見で申し訳ありませんが、「野生生物と社会学会」の名称のように、野生生物と社会との双方の通訳、インタープリーターの役割を果たせる学会であってほしいと思います。今、行政(自治体)には野生生物の行動様式や思い(?)を理解できる人はほとんどいません。こういった人材養成は重要だと思います。
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      • 特にありません。個人的には、学会名称は旧称の方が良かったぐらいです。
          野生生物と社会を、どうするのかがちょっと見えない気がする。逆に何でもできるのかも知れませんが…。
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      • 鳥獣バブルに翻弄されることなく,「生物多様性保全にもとづく鳥獣管理」からぶれない活動をお願いしたい。
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      • 学会の方向性は、積極的に参加しているひとが時代や地域に合わせてその都度決めていけば良い。固定した目標は、そもそもこの学会にはそぐわないはず。
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      • 単に研究者だけの集まりでなく、いかに研究成果を実践に移し、地域社会に還元できるかという点に、もっと力を入れるべきだと思う。以前学会に参加した時に、「研究者」、「行政」、「民間」の連携がうまくとれていないと感じた。研究者は研究者の野生生物を保全したいという気持ちだけを前面に押し出すのは、民間、一般に野生生物と隣り合わせの環境での人々の生活について考慮に欠けると感じた。そこに生活する人ありきの環境であり、人がいない手つかずの自然環境など今の日本に存在しないのだから、それを前提に保全政策を考えていかなければいけないのではないだろうか。
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      • わが国の野生生物保護管理の人材育成や若手人材の育成のために,専門職としての就業場所の拡大を図ってほしいと思います.例えば,自治体などの行政部門に専門職を設置させるとかです.学会として,このための働きかけ(要望書提出とか?)や人材の推薦(資格認定など?)やバックアップやフォローなどが行えるといいかと思います.(・・・当方は,当学会の運営方針や将来像についてよく知らないので,すでに取り組んでおられたら,本意見の僭越をお許し下さい)
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      • 哺乳類だけでなく、その他の脊椎動物、植物、無脊椎動物等についての研究者、保護・管理の関係者等が参加しやすい雰囲気を作ってほしい。また編集の体制を見直してほしい(投稿論文掲載までに信じられないほど時間がかかっている。)
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      • 野生鳥獣との関わり方の哲学
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      • 仲間内の集まり的雰囲気をなるべく廃し、なるべく、我々のような「よそ者」が入って行きやすい学会にして欲しいです。現在もこの点では頑張っておられるのは認識していますが。
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      • アメリカのThe Wildlife Sosaiety を目指しては?
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      • 広い分野にまたがる学際的な学会なので,いずれかの分野に偏る事なく多彩な意見の発表の場として存続して行ってほしいと思います
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      • 現在参加している他の学会と比べるとアンケートを求められる機会が多いように感じますが,問題意識の共有ができて興味深いです。機会が多いぶん,アンケートで得られた回答・意見の内容を確実に反映していただければ幸いに思います。
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      • 今の段階でも他の学会よりはハードルが低いと思うが、研究にたずさわる人以外でももっと気軽に参加できるようになれば良いと思う。
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      • 裾野の広い学会になって頂きたいなあと思います。漠然としたイメージですけど。
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      • 学会としてのクオリティの高さを確保しつつ、より世間に対する影響力というか、アピールができる団体になるとよいのではないか。問題としてすら認識されていない野生生物と社会との間の軋轢はかなり広範囲にあるので、そういったことを知る機会を提供するのは重要。社会科学と自然科学の橋渡し役。
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